たいどん:重い知的障害のある自閉症児。永遠の2歳(高3になりました)
ずかとも(私):過活動膀胱を患う頻尿おやじ。永遠の20歳(たいどんのパパ)
多くの人に読んでほしいと思える本に出逢いました。
タイトルは「異端の福祉」
著者は高浜敏之さん。
株式会社土屋の代表取締役。
株式会社土屋は重度障害者を24時間在宅で支援する重度訪問介護事業所を柱に運営する会社。その事業所「ホームケア土屋」は全国47都道府県に広がり、重度訪問介護事業においては最大規模の会社。
重度訪問介護制度は生きる希望
この本を読んでよかったことは「重度訪問介護」という制度の存在を知ることができたこと。そして著者や著者の会社で働く方々のように、障害者の人権を真剣に考え取組んでいる人たちがいることが分かったこと。
この重度訪問介護制度を利用すれば、介護の負担を家族が負うことなく、家族と一緒に暮らすことができる。
多くの重度障害者が生きる希望を見いだせると確信しました。
こんな制度があるなんて知りませんでした。
「知らない」のは人生において損です。
課題は認知度以外にも
重度訪問介護という制度は素晴らしい制度ですが課題も多い。
この本ではその課題を5つ挙げています。
①自宅で暮らせると思っていない当事者が多い
②制度そのものの認知度が低い
③自治体の財政負担が大きい
④自治体ごとに熱意の差がある
⑤サービス提供のための事業者・人材が少ない
いずれも大きな問題ですが、まずは①②、認知度の低さです。
重度障害者やその家族が制度のことを知っておかないと希望の光が灯りません。
また役人が制度の存在を知らないのも困ります。実際にサービスを受付けてもらえないこともあるそうです。
まずは多くの当事者が知っておくべき制度だと思います。
(障害のレベルによっては利用できません)
③では財政負担がより小さいショートステイを勧められたり、④では前例がないからと渋られたり、予算そのものが十分でなかったりするそう。
これらの解決策は行政を動かすことしかありません。
当事者や業界関係者の熱意や人数のパワーで役所や議員を動かしていく。一筋縄ではいかなくとも根気よく働きかけていくことが求められます。
最後の⑤ですが、ここは著者の会社で独自の動きをされています。
・自社で人材(ヘルパー)を育て
・資格取得後には就業につなげる
人任せにせず、自社で対応できることは対応するという姿勢に熱意を感じます。
福祉を夢のある仕事に
政府は福祉分野で働いてくれる人材を外国から連れてこようとしています。
何故でしょうか?
それは福祉分野で働く日本人が少ないから。
ではなぜ福祉分野で働く日本人が少ないのか。或いは長続きしないのか。
その原因の一つは年収の低さにあります。
(これは想像に難くないですよね)
上記⑤のように研修施設や職場を用意しても、それに応募してくる人がいなければ話になりません。その「人」を集めるためには福祉の仕事に魅力が必要です。
そこで著者の高浜さんは決意します。
優秀な人材が集まるようヘルパーの物心両面を充足させる
(詳細は割愛しますが、平均給与は同業他社よりも高く、ブロックマネージャーになれば年収1000万円も可能。またやりがいも感じられるよう人事制度なども工夫)
また(善良な)会社や事業所は存続し続けなければなりません。特に福祉事業所は、なくなってしまうと支援を受けられない難民が生まれてしまいます。
会社や事業所が「存続していく」ために必要なものがいくつかあります。その代表格は
従業員(ヘルパー)
顧客(利用者)
資金(お金)
従業員の満足⇒よいサービスの提供⇒顧客の満足⇒新規顧客獲得⇒利益が生まれる体制⇒従業員に還元⇒従業員の満足(以下同じサイクル)。
福祉に利益・ビジネスという視点を取込み、こうした好循環を生み出し、障害者のために発展し続ける。素晴らしいことだと思いませんか。
存続していくためにも利益は必要なのです。
福祉分野においても利益を求める。
利益は福祉業界にも夢をもたらす原動力になります。
本のタイトルは「異端の福祉」ですが、この【異端】の意味がここにあります。
(「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」という二宮金次郎の言葉もあるそうです)
また「施設からの転職が多い」とありました。
多くのヘルパーさんは「もっと利用者一人一人に向き合いたい」と考えているのに、施設ではヘルパーひとりが複数の利用者を担当するがゆえに、対応が中途半端になり満足感が得られない。
重度訪問介護ではヘルパーと利用者が1対1での対応となるため、しっかりとサポートすることができお互いの満足度が上がると。
ここにも人が集まる理由があるようです。
終わりに
重度訪問介護制度を知ることができ、また障害者の人権を守るために福祉をビジネスとして取り組んでいる熱い会社、熱い人たちがいることを知ることができました。知ることができるって凄いことだと思います。
本の最後にこう締めくくられています。
どうか障害者問題を自分の問題として考えてほしい。
そもそも障害はすべての人にとって無関係ではありません。
病気や事故で中途障害者になる可能性は誰にでもあります。
そのとき社会に受け皿がないということが、どんなに怖くて不便なことか。
そのように想像すると障害福祉の重要性が実感してもらえると思います。
これからの日本(世界)が解決していかなければならない問題が沢山ありますが、経済も発展させながら、福祉も充実させていく必要があります。
そのためには我々は何をしていかなければならないのか。
真剣に考えなければですね。
為政者連中が報酬の引き下げや、何らかの規制強化といった、足を引っ張るような政策なんかを考えませんように。。。
ではまた。
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