自閉症児と頻尿おやじの不安払拭・未来開拓

自閉症児と頻尿おやじが未来へ向けて行動中

【本】障害者支援員もやもや日記:グループホームの住人と著者の心温まる物語

たいどん:重い知的障害のある自閉症児。永遠の2歳(現在高2です)

ずかとも(私):過活動膀胱を患う頻尿おやじ。永遠の20歳(たいどんのパパ)

 

 

【障害者支援員もやもや日記】

 

2023年に入り発売されたばかりの新刊です。

 

「障害者」という言葉に引かれ購入しました。

冒頭に記したように私には生まれつき障害を持った子供がいます。

障害を持つ子供の親の共通の悩み・心配は「親亡き後の子供の人生」です。親亡き後の子どもの人生がより良いものになるよう、親が安心して先立てるよう、親としてなすべき事は何か。そのヒントにでもなればとの思いからです。

 

本の内容はあとで簡単に紹介しますが、読んでみた感想は

「著者の障害者に対する愛情に感激!」

「このホームに私の子供もお願いしたい!」

 

 

我々がニュースで目にするのは、障害者施設で起きた虐待事件など暗い出来事ばかり。

どこの施設にもニュースにならないだけで虐待行為が行なわれているのではないかと疑心暗鬼になっていましたが「こんなに愛情を持って障害者に接して下さる支援者もいるんだ」と感動しました。

 

もちろんこの本がその施設の全てを物語っているわけではなく、ひょっとすると他の職員による虐待行為のようなものがあるかもしれません。でもこんなにやさしい支援員(著者)さんが長く(約8年。お年はなんと78歳)働いているのですから優良な施設と言ってもいいのではないでしょうか。

 

著者と物語の舞台

この「障害者支援員もやもや日記」の著者を簡単にご紹介します。

松本さん(男):70歳を目前にしてグループホームの障害者支援員として就職。現在78歳。70歳を過ぎても腕立て伏せ30回、鉄アレイを持ってのスクワットを日課にしているパワフルな御仁。残念ながら現在はある病気の手術を終えリハビリ中だが、施設の利用者からは「早く帰ってきて」と復職を求められている。

 

物語はグループホーム「ホームももとせ(注)」を舞台に、著者の松本さんと住人の間でおきた出来事を中心に書かれています。

(注;本の中では「精神障害者ホーム」とあります。「ももとせ」は「百年」の意味。住人の数は男性10名、女性10名の合計20名)

数ある物語の中から私のお気に入りを簡単に紹介します。

 

 

感動したエピソード

タイトル「けじめの××××」より

ヒコさん(注)は無断外出が得意(?)なホームの住人。ホームを飛び出していろんなお店に出かけます。お店からは「ヒコさんが来てるよ」とホームに電話がかかってくることも。

ある日またヒコさんがホームを抜け出しました。松本さんがヒコさんを追いかけるのですが、持病の腰痛が悪化しており四苦八苦。

ヒコさんも追いかけてくる松本さんを見ては逃げていきます。いつもなら走って追いかけてくる松本さんですが、今日はいつもと様子が違う。ヒコさんも何か変だと気づいたのでしょうか。ヒコさんは逃げるのをやめました。

ようやくヒコさんに追いつき、ヒコさんの手を握った松本さん。ヒコさんにやさしく語り掛けます。

「一人で外に出てはいけません。知ってるよね?」

だまってうなずくヒコさん。

「ヒコさんは勝手に外に出たから×(バツ)、松本さんはヒコさんを外に行かせたから×、二人とも×だから二人で罰を受けましょう」

そう言ってお互いの額と額をごっつんこ。

ヒコさんは泣き笑いのような表情を浮かべ「私も同じくらい痛かったよ」と松本さん。

腰痛のため歩みの遅い松本さんを心配してか、ヒコさんは松本さんと腕を組んで帰っていくのでありました。

(注)ヒコさん(男):グループホームの住人。年齢は20代(だと思われます)。プロ野球球団の全選手を記憶している自閉症の寂しがりや。

 

普通なら「何で勝手に外に出たんだ!」と怒鳴りつけるのではないでしょうか。でもそんなことをせずやさしく接しヒコさんだけを悪者にしない松本さん。過去にヒコさんに歯形が残るくらい強く噛まれたことがあるのにです。もしも私ならヒコさんに手をあげていたかもしれません。。。いや、あげていたでしょう。。。

 

 

終わりに

この他にも「一時帰宅ができるようにヒコさんと作戦を考える話」や「毎朝バスに乗り遅れるホームの住人が遅れずに乗れるようになった話」などたくさんの物語が書かれています。心温まるエピソードばかりではなく、「えっ!?」と驚く出来事や社会の問題を取り上げた話も綴られています。でもどれも著者の松本さんのやさしさや真剣さが伝わってくる話ばかりです。障害者との接し方のヒントになるようなことも書かれており障害者が身近にいる人はもちろん、障害者との接点が少ない方にもおすすめの一冊です。

 

著者の松本さんはあとがきの中でこう仰られています。

一風変わった利用者たちはみな独特のキャラクターを持っている。そんな彼ら彼女らをわれわれと同じにする必要はないと考えるようになった。日常生活をなるべく人の手助けを少なくすごすことができ、そして人生の中で幸せや喜びをかんじてもらえればいい。

 

世間では「ノーマライゼーション(障害のある人が障害のない人と一緒に暮らせる社会)」「多様性」などといったカッコいい立派な言葉があふれていますが、現状はまだまだであり差別や偏見が多い今の社会。

一日でも早く、差別のない理想の社会が実現するよう、多くの方々に障害者のことを知って頂き、そして理解して頂きたい。多くの方々にこの本を読んで頂きたいと思います。

 

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ではまた。

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