2022年1月20日、大阪地裁で判決が下されました。
「マンションをグループホームに使うな!」
マンションをグループホームに使ってはダメ? 大阪地裁の判決は:朝日新聞デジタル (asahi.com)
グループホームのマンション利用「管理規約違反」 大阪地裁判決 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
正確には「グループホームとして使用するのであれば、【一般のマンションには不要な】消防設備を設置せよ」というものです。
何故でしょう。
他の家庭と同じように、そこで普通に暮らしているだけなのに。
障害児の親としてとても気になるニュースです。
自分なりに考えてみました。
提訴に至った経緯
訴えたのはマンションの管理組合です。
そのマンションの管理組合が訴えに至った経緯は次の通りです。
- マンションは15階建て(251室)の分譲マンション
- グループホームは15年以上前から2室で運用されている
(記事にはグループホームを運営する法人が「借りて」運営とある) - 組合側は2016年の消防の指摘でグループホームが運営されていることを把握
(マンションは定期的に消防設備の検査を受けます) - グループホームには(マンションであっても)福祉施設に対する消防法が適用される
- そうなるとマンションでは「特例で免除されている」消防設備が必要になる
- 積立修繕費などの値上げにつながる
- そこでマンションの管理規約に「グループホームの運営は禁止」を追加したが、グループホームの運営は続けられている
提訴のきっかけは、きちんとしたマンションなのに福祉施設に関する消防法が適用されることにあります。
特例で免除されている消防設備
マンションに適用されている特例とは、例えば「自動火災報知機」があれば「屋内消火栓」は免除されるといったものです。
屋内消火栓はマンションにはありませんが、(比較的大きな)病院には火災報知機も屋内消火栓もどちらもついています。
マンション(共同住宅)の場合は、このような特例があります。
マンションは構造が特別
なぜマンションには特例措置があり、福祉施設や他のビルにはないのでしょうか。
理由は構造の違いにあります。
マンションは耐火構造の床、壁などで防火区画されていて、一般のビルと比較して火災時の炎症拡大の恐れが小さいからです。
費用負担増は疑問
にもかかわらず、251部屋のうち、2部屋がグループホームとして利用されているだけで、消防設備の増設が要求され、それに伴い居住者の費用負担が大きくなることに抵抗を示すのは理解できます。私もこれには抵抗します。
裁判所の判決理由
裁判所がこのマンションが福祉施設と同じ消防法が適用されると判断した理由は
「自力で非難が難しい障害者たち」
が生活しているからだそうです(朝日新聞デジタル)。
判決理由への疑問
この判決理由に疑問がわきませんか?
「自力で非難が難しい人」とはどういう人でしょうか。
肢体不自由の方
まず思いつくのは「車いすを利用されている方」です。
また「自力でベッドから車いすに移ることが出来ない方」なら尚更です。
病院にはこういう方々がいます。
では一般のマンションにはいないのでしょうか?
知的障害の方
うちの次男は知能レベルが2歳児程度です。
身体は大きいですが、知能は子供です。
火事が起きたらどういう対応を取るのか分かりません。
玄関から外に逃げるのか、或いは火のない別の部屋に逃げ、不幸にして逃げ遅れた形になってしまうのか。
でもたいどんを一人にすることはありません。
これは小さなお子さんや認知症の方がいる家庭と同じだと思いませんか?
グループホームも一般の家庭も同じ
上記の通り、一般の家庭とグループホームに差はないのです。
グループホームに住んでいる方は、昼間は作業所などに通います。
夜はグループホームで過ごしますが、職員さんが滞在されています。
ニュース(毎日新聞)では、利用者は40~70代の女性が6人と書かれていますが、こちらも一般の家庭と差はないはずです。
良し悪しは別にして、居住者の方々もその2部屋がグループホームだとは気づかなかったのです。
即ち他の家庭との差は何もないのです。
障害者差別解消法
正式には「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」です。
平成28(2016)年4月1日施行です。
詳細は割愛しますが、
「障がいのある人も、ない人も、互いに、その人らしさを認め合いながら、共に生きる社会、共生社会をめざす」
というものです。
「町で一緒に暮らそう」
というものです。
上記のようにグループホームと一般家庭に大差はない。
それにもかかわらず「共に生きよう」と言っている行政サイドが、障害者を一般家庭と違うと言って差別している。
そう思えてなりません。
町に出ても「映画:梅切らぬバカ」のような問題もあります。
(投稿記事は下の方に)
法の解釈は人で変わる
話はちょっと脱線しますが、憲法第9条をご存知ですね。
「戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認」
を謳った法律です。
この憲法第9条をめぐって「自衛隊は戦力かどうか」が過去に議論がされてきました。
旧社会党は政権を取ったとたん、その意見を変えました。
「戦力だ」と言っていたものが「戦力ではない」と。
ここでは憲法第9条の内容ではなく、
「人によって解釈が変わる」
ことを言いたいのです。
つまりは、裁判長の考え一つでどうにでもなってしまう危うさを。
(もとはと言えば消防署の「マンションと言えども福祉施設」という解釈が原因ですが)
判決を出した裁判長の家庭環境は分かりませんが、もしも裁判長が害者の親だったら、裁判長に認知症の親がいたら、判決は違ったものになったのではないでしょうか。
4万人が追い出される?
毎日新聞によると
厚労省の調査では、21年4月時点で、グループホームの利用者は約14万人。一部の調査ではそのうち約3割がマンションなどの集合住宅を利用している。
14万人の約3割といえば約4万人。
今回の判決がまかり通ってしまうと、4万人の人が消防設備の負担ができないマンションなどから追い出されることになります。
約4万人。
一部屋4人としても、10000部屋が必要。
10000件の一戸建てが必要ということ。
この判決の裏に住宅会社がいることはないと思いますけどね。。。
高等裁判所の判決に注目
グループホームを運営する法人は控訴するとのこと。
判決がいつ下されるのか未定ですが、その控訴審の判決に注目します。
高等裁判所の裁判長が、人間味のある人であることを願っています。
グループホームと言えども、生活スタイルは他の家庭と同じ。
従い特別な消防設備は不要であると。
そしてマンションの規約からグループホームは禁止の一文がなくなりますように。
<未来へ向けての私は>
難しい問題です。
何ができるのでしょうか。
たいどんはグループホームではなく入所施設を考えていますが、必ず入所施設に入れるとは限りません。
某国会議員のホームページにアクセスし、この件についてメールを送ってみようかと。
ではまた。
遅れましたが自己紹介。
ずかとも(私):過活動膀胱を患う頻尿おやじ。永遠の20歳(たいどんのパパ)
たいどん:知的障害のある重度自閉症児。永遠の2歳(本当は高1)